時は現代。島の南端にある灯台の頂上にドウィは座っていた。

彼女は非常に背が低く、とても姿勢のよい12歳の女の子である。彼女の左の瞳はわずかにずれており、それが神秘的な印象を与えている。着物のような黒い上着と、彼女の漆黒の髪の色と調和のとれた制服のような型のズボンをはいている。彼女は地平線に沈む夕日を静かに見つめていた。

灰色の長髪の、70歳代半ばの老人が、彼女の祖父である。彼は奇妙な形の椅子に腰掛け、ドウィと籐のテーブルを囲んでいた。

太陽が沈むにつれ、古い灯台の姿が暗く濁った海にぼんやりと現れている。灯台の光源はずっと前に外されている。そのせいもあり、夕暮れには不気味な雰囲気が漂う。

二人が囲うテーブルの上には、珍しいデザインをした太陽光発電式の短波受信機が置かれ、そこにはマイクが繋がっている。 ドウィは受信機の大きなつまみを回した。すると、小さな内蔵スピーカーから雑音が聞こえてきた。
彼女はマイクを手に取り、軽く何度か叩いてから、太陽光パネルに着いた埃を拭き取る。
沖の方には、雨雲が近づいてきている。

ドウィ

テスト、テスト。 大丈夫、生きてる。

祖父

受信機のことかい?

ドウィ

ううん、私たち。私たちは生きてるんだよ。

祖父はあくびをした。ドウィは微笑み、祖父の方に体を寄せて言った。

ドウィ

宇宙人ごっこしよう。

祖父は頷く。

ドウィは地面にあったマヤ族のかぶり物を拾い上げた。色鮮やかな羽ではなく、その入り組んだデザインは、ウミトサカのサンゴの形をした、薄い半透明のガラスで作られていた。その技巧は非常にすばらしいものだった。

ドウィ

これで本当に星まで届くの?

祖父はドウィに真剣な眼差しを向けている。

老人

昔は届いてたがね。でももう届かない。

ドウィ

どうして?

老人

さあ、始めようか。遅くなってしまうよ。

彼女は少し考えた。そして、まっすぐ椅子に座り、咳払いをしてから、彼女の得意な宇宙人の声を真似た。

ドウィ

コンニチハ、ワタシはドウィだ、宇宙からやってキタ。あなたの星の最も珍しいものをクレ。

祖父は、まるで何千回も聞いたかのようにぶつぶつと答える。

祖父

ふう。ドウィ、またお会いできて嬉しいよ。だが、お目当てのものを見つけるのはお前自身でなければならん。ルールは知っているだろ。はい、次。

ドウィは声を出して笑った。

ドウィ

我々の宇宙船が墜落シタ。家に帰れナイ。どうすればあなたの星で生き残ることができるノカ。

彼女は薄暗い島を見渡した。

祖父

約束をするんだ。

困惑したのか、ドウィは少し頭を傾げた。

祖父

自分自身の力で、たとえどんなに辛くて大変でも、最後まで諦めない、と。

ドウィは手すりに足をかけ、背をもたれながら考えた。

祖父

そうすることで、無理だと思うような悲しみの中でも、自分との約束を守るために、しっかりと自分の意志で進んで行けるはずだよ。そして、その先には冒険に値する何かを、きっと見つけることができるよ。

ドウィの目は祖父の言葉を聞いて輝いた。

ドウィ

わかっタ。

祖父

私もここに移り住んだ時、この約束をしたんだ。

ドウィは一瞬いつもの声に戻り、こう言った。

ドウィ

じゃあ、私も約束する。

祖父は頷いた。ドウィは少しずれてしまった被り物を、元の位置に戻し、宇宙人の真似を続ける。

ドウィ

私の家族はどうなるノ?もう会えないノ?この約束だけじゃどうにもならないヨ。

祖父は立ち上がり、広大な海を見下ろす。そして彼は、首に掛けた二つ重なり合う螺旋状の形をしたガラスのペンダントをこすりながら、深く息を吸い込んだ。

祖父

今、家族のことを想像してごらん。遠く離れた、宇宙の中心にいる家族のことを。心の中で彼らのことを思い浮かべて、お話しができるかい?

彼女は頷き、思い出している。

祖父

じゃあ、次は私のことを想像してみて。千年もの長い間、私がここからいなくなったとしよう。 お前は私をここに連れ戻すことができるかな? さあ。

彼女はしばらく考えて立ち上がり、祖父を見つめながら頷いた。

祖父

ほらね、空間と時間は重要じゃないんだよ。 愛する人たちは決していなくなったりしないんだよ。